老後を見据えた投資・資産形成の考え方
金融庁が公表した「高齢社会に置ける資産形成・管理」の報告書に「老後に2,000万円が不足」と書かれていた問題で、
「老後の生活、年金だけじゃ足りないのだろうか。。」
と心配になられた方も多いのではないでしょうか。
私がいるFPの業界では、
「老後に豊かな生活を送るのであれば、公的年金だけでは足りない。」
これは常識です。
2009年6月ごろ話題になった金融庁の「老後に2,000万円必要」と論じた試算は、老齢夫婦の生活費を月約26万で計算しています。しかし、実際老後に豊かな生活を過ごすためには、月に約35万円程度必要です。
物価上昇(インフレ)のリスクまで考えると、2,000万円あっても足りません。
そもそも、老後に貯蓄を取り崩して生活をすること自体、怖くありませんか?
自分の寿命と共に徐々にお金が減っていくというのは気持ちが良いものではないはずです。
資産を取り崩す生活はなるべく後回しにしたいものです。
このような老後の不安、どのように考えて行けば良いのでしょうか
日本の年金財政はやばい?
ところで、「日本の年金財政は、少子高齢化だからやばい」という話、よく耳にしませんか?
このように言われている理由は、日本の年金制度は、「現役世代の年金保険料が受給世代の年金にすぐに使われる仕組み」になっているからです。このような仕組みを「賦課方式」と言います。
自分の払った年金が自分のために積み立てられていると考えている方が多いと思いますが、そうではないということです。
某政党が選挙で「年金を賦課方式から積立方式に!」とおっしゃってましたが、それはこのような前提があるからです。
日本の国民年金、厚生年金の制度は、「賦課方式」をとっていますので、「将来年金制度を支えてくれるはずの子供たちが減って、年金を受け取る高齢者が増加するからやばい」のです。
年金制度については、マンガでわかるものが、厚生労働省から発信されているので、ご参考にしてください。
(マンガを読み終わったらブログに戻ってきてください!)
このように年金制度を理解すると、「毎月お給料から払っている年金保険料がすぐに使われてしまっているなんて納得できない!」という人も多いのではないでしょうか。
一方、受給者の方は、「俺たちも払ってきたんだから当たり前だ。」と思われる方も多いと思います。
年金制度は、現役世代と受給世代という立場の違う人々が参加している仕組みですから、制度自体に批判や摩擦がつきものです。
本来、現役世代の奉仕の気持ちと、受給者世代の感謝の気持ちがもう少し行き交うと理想的なのですが、現実は厳しいです。
現役世代の人の中には
「僕たちが今の制度を支えてるんだから、消費税も上がるんだし、政府の方からせめて給与水準をあげてもられるように会社に言ってくださいよ!」
という意見を持っている人もいます。
政府としても国民の給与が上がればそれだけ税金や社会保険料(年金、医療)を徴収できるという計算も成り立ちますので、それは進めようとしてはいます。しかし、あまり圧力をかけすぎると、企業の方も「いやいや、ない袖は振れないよ。会社潰れちゃうよ。」という悲鳴をあげてしまいます。「中小企業いじめ」などと言われては、かないません。
年金制度は構造的に少子高齢化が問題、
会社だって無い袖は振れない、
このようなことから、これからの時代は、政府や会社に頼りすぎず、自分の身は自分で守る考え方を身につける必要があります。
自分たちができること
先ほど申し上げた通り、老後の資産は2,000万円でも足りません。
その不安に対す対策は、
- 働ける時間を延ばすこと、
- 給与や年金以外の収入を得ること
です。
そこで、大事になるのが「投資」という考え方を持つことです。
ここでいう投資とは、未来に実りが得られるもののことです。
昔話の「さるかに話」でいうと、
将来、実がなる柿の木を育てることを「投資」というわけです。
後に残らない「おにぎり」は投資ではありません。
では、収入を得られるようにする「投資」には具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
投資の種類
ここでは、誰でも実践できる投資の種類をあげます。
・スキルアップ
・ビジネスの保有
・金融資産の形成
スキルアップ
(スキルアップの箇所は、少し説教くさいです。不快な方は飛ばしてください。)
スキルアップとは、勉強や技術の鍛錬のことです。
このように申し上げると、英語力を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
最近だとプログラミングスキルも注目されています。
しかし、ここで注意をしなければならないのは、
「中途半端なスキルではお金にならない。」
「老化しない蓄積される稼げるスキルが必要。」
ということです。
例えば、私は大学の時に飲食店でのアルバイトをしていましたので、調理師免許を持っています。少しくらいは美味しいパスタを作れますが、レストランのシェフとして働くことは到底できません。つまり、私の中途半端な調理師の技術は、お金を稼ぐにあたっては役に立たないのです。
「学生時代に数ヶ月留学したけど、人に英語を教えるなんてできない。」
という方も少なくないのではないでしょうか。
プログラミングも軽くかじる程度では、老後どころか今を生きる力にすらなりません。せっかくやるなら、プロのプログラマーとして働けるスキルを身につける必要があります。しかも、日々スキルを向上させながら。
「老化しない蓄積される稼げるスキル」の例
例えば、医療の検査技師や看護師の世界では、「採血注射」は1つのスキルになります。採血注射は、刺される患者が嫌がることはもちろんですが、刺す方の医療技術者の方も嫌がる人が多いそうです。「注射のあと手がしびれた」なんて言われたらたまらないですから。
例えば、「どんな患者に対しても上手に採血ができる」という能力があれば、何歳になっても病院で重宝してもらえるかもしれません。
もう1つの例です。
私がいる金融の業界では、保険の売り込みセールスを70歳になってもされている方がおられます。保険の売り込みのスキルは、年をとっても衰えないため、稼げる限り仕事を続けられるようです。人生経験も保険を語る際の言葉の重みになります。
このように、経験が宝になるスキルを積んでいくことが、スキルへの投資となります。
人から認められるスキルの例
ここまで挙げた専門スキルをみて、
「機械化によってスキルが無駄になるのでは?」と思われる人もいると思います。
だからこそ、先述のような、専門スキルの他にコミュニケーション能力という、何をするにおいても必要なスキルは当然養っておく必要があります。これは、絶対にAIとって変わることがないスキルだからです。
例えば、
65歳で若い人に偉そうにする元役員と、
65歳で若い人とも対等の立場で話し、若い人からの学びに余念がない現場一筋のおじさん
あなたが、人手不足の会社の採用担当ならどちらを採用しますか?
ここでも1つ例を挙げます。
ある会社が、役員のハイヤーの運転手を2人から1人に半減させるという話があったそうです。
リストラです。
さて、この会社、下記2人の運転手さんのどちらの雇用を継続したでしょうか?
Aさん:若いが機械的な仕事。特に無駄はないが、特徴もない。
Bさん:年齢は中高年クラス。仕事ぶりはAさんと同じかそれ以下。(むしろ高速道路での運転は少しハンドルがブレる)新入社員にすら腰が低い優しい方。
社員から人気があったのは、Bさん。雇用が継続されたのも、もちろんBさんです。
私もBさんを知っていたので、「当然だな〜。」と思いました。
「役職」とか「若さ」は、時間と共に価値が無くなりますが、「人間性」は価値が高まるわけです。
余談が続きますが、私が過去証券会社で働いていた時、鬼の営業を課される証券会社の中で、とても優しい上司の下に就くことができました。
その人は、過去は「鬼の支店長」として恐れられていました。
しかし、私と出会った時には完全に「仏の支店長」でした。
「鬼」でやっていると、人生いろいろあったみたいで、丸くなったそうです。
もし、支店長に「俺が会社作るからついてきてくれ」と言われた際、
「鬼の支店長」と「仏の支店長」あなたならどちらについて行きたいですか?
定年後に会社を興せるくらいの人になりたいものです。
(この文章を書いていて私も、FPとして大事なことは知識だけではない、と思い返しました。)
ビジネスの保有
ビジネスの保有というと多岐に渡ります。
例えば不動産を保有して賃貸したり、フランチャイズや代理店を経営したり、もしくはご自身でスマホのアプリを開発したりするようなことがあげられるでしょう。
目指すべき姿は「自分はできるだけ動かない状況を作る」ことです。
例えば、不動産賃貸業で言えば、ご自身が毎日汗水垂らして働かなくても、マンションを人に貸しているだけで賃料が入ってきます。管理面も専門会社に委託すれば、オーナーさんは決断をしているだけで良いわけです。
フランチャイズの経営やアプリの開発などは、自分だけで回していくことは困難なので、経営者として現場は人に任せることが必須になります。
成功例としては、「整体師として修行をつみ、独立して整骨院を1店舗成功させ、弟子を作り何店舗も展開し、今はご自身はマネージメントに徹している」という人はいます。
「スキルの投資」を「ビジネスの保有」まで昇華させている例です。
すごいですよね。
この分野は、1人のFPである私が語るよりも、多くの成功者から学ぶことが重要になりますので、別の機会に一緒に学んで行きましょう。
金融資産の形成
金融資産は、持っているだけで、金利や配当が受け取れるものがあります。
1億円の円預金はほとんど金利を生み出しませんが、
例えば、100万ドルの外貨は年間に100〜200万円ほどの金利を生み出します。
配当利回り3%の株を1億円分持っていれば、税引後で240万円の配当を受け取れます。
取り崩さないと使えない円預金と、
多少価値の変動はあるけど、お金を生み出す金融資産、
どちらが生活を助けてくれるでしょうか。
※外貨などに投資する際は、リスクがあります。
優先順位
金融資産の形成で優先すべきことは、土台としての金融資産を築くことです。
例えば、貯金が10万円なのに、突然株式投資をしたり、借金して不動産ビジネスを始めるなんて無謀です。
まずは、緊急用の数ヶ月分の生活費を預金として貯蓄し、
万が一のための保険に加入し、
お子様の学費や家族の老後資産を貯めていく仕組みを作りをする必要があります。
そのためには、収支管理から改善していく必要があります。
収支が黒地になり、土台となる金融資産を築いていくペースが掴めたら、まず第一歩として私が推奨していることは、
「株式投資」です。
株式投資は、経済の動きを学べるため、先ほど述べた「スキル」への投資、「ビジネスへの投資」にも繋がるからです。
株式投資は、その企業の1人のオーナーになることを意味します。
株に投資する際は、その企業のサービスが、「お金を稼げるものになっているか」「お客さんが喜んでお金を払ってくれるビジネスになっているのか」という目線で見る必要があります。
どんなに大手の企業でも、「あの企業のサービスはもう古い。」という企業の業績は下がって行きます。
一方、「この会社はお客さんがたくさんきているから儲かってる。行くたびにサービスが進化している。」と思える企業の売上は大きくなっていくことでしょう。
業績が好調な企業は、株価の上昇か、高配当という形で実りを得られる可能性があります。毎年100円の配当がある会社の株を、10,000株持っていると毎年10万円の配当が出ます。
このように、株式自体をお金を実らせる木とみなして投資していき、株式投資で養った先見性をスキルやビジネスの投資に生かしていくことをお勧めします。
まとめ
はじめに老後資産は2,000万円でも足りないと申し上げました。
その上、政府や勤め先は依存できる対象ではありません。
自分の身は自分で守るために、収入が得られるものに投資をしていく必要があります。
スキルへの投資は、働ける時間や収入自体をのばし、
ビジネスや金融資産は給与や年金以外からの収入を生み出します。
まずは、老化しないスキルを身につけ「自分はどこ行ってもある程度は稼ぎ続けられる」という自信を持ち、不動産などのビジネスはじっくりと考える中で、株式投資で自分の先見性やセンスを磨いていく、というのが、誰にでもできる老後のための準備となります。
私も、年を取るたびに良いFPになっていかなければなりません。
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